今回は、ミステリー小説「 セイロン亭の謎 」を読み終わりましたので、感想レビューしたいと思います。
むかし「御宿かわせみ」を祖母が公共放送でドラマをみていましたので、平岩弓枝さんのお名前は知っていましたが作品を読むのははじめてでした。
と、いうか。
現代物を書かれているのを知りませんで、びっくりしたくらいの不勉強ぶりでした。
そんな筆者がはじめて、平岩弓枝ミステリを表紙買いしてみました。
重要なネタバレはなしに、よかったところや、ここはちょっと残念だったなというポイントを紹介していきたいと思います。
よかったら、見ていってください。
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「 セイロン亭の謎 」

(楽天Kobo書影引用)
- 著者: 平岩弓枝
- レーベル: 文春文庫
- 発売日: 2023年02月07日
- 出版社: 文藝春秋
- 電子書籍価格(楽天Kobo):800円 / 紙書籍(文庫):803円
楽天Koboで「 文春文庫50%OFFキャンペーン 」の時に、この素敵な表紙に惹かれて購入しました。
登場人物
- 矢部 悠(やべ ゆう)
- 肩書はキャスターでTVで知られた顔だが、本業はルポライター
- 静岡で老舗のお茶の卸問屋「 静華堂 」の次男
- 高見沢 清一郎(たかみざわ しんいちろう)
- 悠の大学時代の友人で、紅茶喫茶店チェーン「 セイロン亭 」の後継者
- 先代・高見沢 清行(きよゆき)の愛人の子どもで、高見沢家の養子
- 高見沢 隆子(たかみざわ たかこ)
- 清一郎の義理の母で、「 セイロン亭 」の社長
- かなりのワンマンぶりで、関係者みんな恐れをなしている
- 稲村 公子(いなむら きみこ)
- 隆子の妹の子どもで、清一郎の従姉妹にあたる
- 「 セイロン亭 」が芦屋に出したフレンチレストランのマネージャー
- 森山 信司(もりやま しんじ)
- カメラマン
- 悠と組んで「 高見沢家 」を取材した縁で、事件と関わり合いになる

ルポライターといえば、警察官僚を兄に持つ各地の観光名所で事件を解決している男性を想像されるかと思います。
矢部さんはその方より、事件に対しては控えめに参戦していきます。
あらすじ
女性雑誌の紅茶特集で、人気の紅茶喫茶店「 セイロン亭 」を取材することになり、大学時代の友人である高見沢清一郎とひさしぶりに再会した矢部悠。
「 セイロン亭 」の後継者問題として、高見沢家の血筋は絶えさせない!と、清一郎の結婚相手を勝手に決めようとしている社長・隆子に驚く一同。
セレブ一家の内情に戸惑いながら。
神戸から東京にもどり、仕事の原稿を完成させた矢部の元に「 セイロン亭の女社長が殺された 」との連絡が入る。

豪華な邸宅で、頭を鈍器のようなもので殴られて殺されていた社長の隆子。
はじめは強盗殺人だと思われていましたが、警察は早々に偽装の疑いがあると、後継者でいざこざがあった清一郎へと捜査の矛先を変えていました。
清一郎を心配した稲村公子に頼まれて、事件を調べるために矢部さんは神戸へやってきます。
主人公の矢部が、あまり感情を表に出さない穏やかな人なので、最初は淡々と物語は進む印象です。
異人館の街並みとセイロンハウス

神戸の異人館通りのなかで、緑に囲まれたひときわ立派な洋館の高見沢邸
セイロン亭の女社長・隆子が亡くなる前に、清一郎のもとに
「 Do you know the secret of Ceylon house? ( セイロンハウスの秘密を知っていますか? ) 」
という、謎の電話かかってきていました。
そして翌日には、中国語で書かれた同じ意味の手紙が届いていたのです。
これは犯人からの脅迫だったのか?それとも、殺人事件とは関係のない悪戯のメッセージなのか?
清一郎は、父・清行が「 セイロンハウスの秘密 」の話をしていたのを覚えてました。
立派な洋館の高見沢邸が「 セイロンハウス 」なのか?
それが殺人事件となんの関係があるのか。
謎が深まる展開になります。
第二の事件
神戸に、事件を調べるという名目で、友人の清一郎を心配してやってきた矢部さんですが。
なんと、高見沢邸に宿泊しているところを、清一郎といっしょに命を狙われてしまいます。
矢部さんは朝方に、階段をおりていく靴音を聞き目が覚めます。
しかし、家中を探してみても人の姿は見つかりませんでした。
誰が、どうやって狙ったのか?
清一郎までも狙われたということは、やはり社長の隆子は強盗殺人ではなくて、怨恨または財産を狙って殺されたのか?
身近に迫ってきた悪意に、矢部さんは今更ながら恐怖を感じるのでした。
繋がる「 狐っ葉きつねっぱ 」事件

矢部さんの亡きお父さんが研究していた静岡の茶葉や茶の歴史が、事件に光をあてる
矢部さんの実家である清華堂と取引のあった茶商の仲買人に、イギリス人がいたことが判明します。
そのイギリス人茶商の神戸の家が、「 セイロンハウス 」と呼ばれていたのです。
清華堂の取引相手だったイギリスの茶葉輸入会社の「 ハードマン・ブラザ商会 」
「セイロン亭」の後継者である清一郎に、「 ハードマン・ブラザ商会 」のことを尋ねてみると黙り込んでしまい、電話を切ってしまいます。
清一郎は何に気づいたのでしょうか。
事件はこのあと、第三・第四の悲劇が待ち受けていました。
ちょっとポイント・スマホやインターネットが出てきません
矢部さんはルポライターですが、警察との連携はないので事件の詳細などは新聞で確認します。
推理小説には珍しく、捜査関係者で名前のあるキャラクターが出てこないのです!
物語での年代は限定されていませんが、スマホやインターネット関連の描写がでてきませんでした。
家や会社に電話しても相手がいなかったら、何回もかけ直すのですよ。
LI◯Eとか出てきません。
そして仕事の原稿はFAXで送ります!( お若い方々にはFAXってなに?ってところからですよね )

FAXとは「電話回線などの通信回線を使って画像を送る仕組みおよび機械」であり、遠隔地間で紙の文書をそのまま送受信できる技術です。
そんな今では回りくどく思えるやり取りに、アラフィフの筆者はとても懐かしさを感じました。
作品自体に古さは感じなかったのですが、「 山村美紗サスペンス 」や「 昔の2時間ミステリー」のような雰囲気がありました。
残念ポイント
起ったできごとが比較的、淡々と綴られていく作品です。
登場人物たちの心の内があまり表に出して表現されていないため、共感という点ではしづらいかもしれません。
深層心理や思考の流れを追いかけて、深く犯人や関係者のこころの中に入っていくような作品を期待して読むと、この作品は外れると思います。
みんながみんな、秘めたものを持っていて隠そうとしているというのは分かりますし。
矢部さんの視点で進む話ですので。
はじめて会った人に対して、腹を割って話をするということのほうが珍しい話といえます。
そういう意味では、現実的な表現といえるのかもしれません。

しかし、正直いうとキャラクターの心情に、もう少し深く突っ込んでほしかった!
上から言うようでおこがましいですが、せっかくおもしろい話なのにもったいない気がしました。
まとめ
ミステリー小説「 セイロン亭の謎 」は総ページ数は272ページなので、サクサク読めます。
しかしこの作品は、おそらく読んだみなさんが起こってほしくないと思っていた結末を迎えます。
「 犯人を推理する 」というより、現実に「 殺人事件 」に遭遇してしまった一般人は逃げたほうがいいな、と教訓になるような結末です。
淡々とした文章に油断していると、とんでもない展開にヤラれますので期待してください。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
まめでした。
![]() | 価格:803円 |

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