今回は、ミステリ小説の巨匠ジョン・ディクスン・カー著作「 緑のカプセルの謎 」の新訳・文庫本がとてもおもしろかったので感想レビューしていきます。
「 緑のカプセルの謎 」( 原題:The Problem of the Green Capsule )は、ギデオン・フェル博士シリーズの10作目で、なんと1939年の作品です。
古典ミステリと呼ばれる巨匠たちの作品を、読みやすい新訳で出版してくれるのは本当に嬉しいです!
この作品はフェル博士シリーズの10作品目なのですが、基本的に一話完結型ですのでどこから読んでも楽しめます。
古典ミステリって堅苦しそう?
現代ミステリのほうが洗練されて読みやすいんじゃない?
と、思われる方にぜひ読んでいただきたい作品です。
よかったら読書選びの参考にしてください。
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「 緑のカプセルの謎 」

(引用元:楽天ブックス)
- 出版日: 2016年10月14日 初版
- 著者/編集: ジョン・ディクスン・カー(著)、三角和代(訳)
- レーベル: 創元推理文庫
- 出版社: 東京創元社
- 発行形態: 文庫
- ページ数: 332p
登場人物たち
- マーカス・チェズニー
- 桃栽培の実業家の大金持ち。ワンマンな性格
- マージョリー・チェズニー
- マーカスの姪。なんでもマーカスの思い通りになってしまうことに反抗している
- Dr.ジョゼフ(ジョー)・チェズニー
- マーカスの弟。医師
- ウィルバー・エメット
- マーカスの秘書。チェズニー家の果樹園の責任者
- ジョージ・ハーディング
- 科学者。マージョリーの婚約者
- ギルバート・イングラム教授
- マーカスの友人。心理学の教授だった

探偵役でギデオン・フェル博士と、
ロンドン警視庁犯罪捜査部(スコットランド・ヤード)のエリオット警部が登場します。
あらすじ
内容紹介(出版社より)
小さな町の菓子店で、何者かが商品に毒入りチョコレート・ボンボンを混入させ、死者が出るという惨事が発生した。
さらにその町の実業家が、自ら提案した心理学的テストの寸劇中に殺害されてしまう。
透明人間のような風体の人物に、青酸入りの緑のカプセルを飲ませられて。
不気味きわまりない犯行、甚だしく食い違う目撃者の証言。
読む者を驚倒させる、精緻にして大胆な結末とは?
フェル博士の毒殺講義でも名高い傑作が新訳で登場!

発端は、ソドベリー・クロスの村で起きた毒入りチョコレート・ボンボン事件でした。
村に3軒しかないタバコ兼菓子店、その中で一番人気のミセス・テリーのお店。

事件が起きる少し前にミセス・テリーの店でチョコレートを買ったマージョリーが、村のみんなから疑われる状況が続いていました。
みどころ
村で起きた毒入りチョコレート・ボンボン事件のトリックは明白だ!と、実業家・マーカスが自信たっぷりで始めた『 心理学的実験中 』に殺人事件が起こります。
『 心理学的実験 』とは?という感じですよね。

マーカス曰く。
ある寸劇を上演して、すべてが終わった後に寸劇に出てきた物や人物に関しての質問をする。
しかし、目撃していたはずの人物たちの証言はまったく当てにならないだろう。ということでした。

その寸劇の最中に、殺人事件が起こってしまいます。
なんと事件を記録していた映像が残っている!
この作品のいちばんの見せ所といえば、これでしょう。
マーカスの「 心理学的実験 」の様子が、映像で記録されていたというのです。
そんな良いものがあるなら、その証拠映像を見れば犯人は一発で分かるでしょう?と、みんなが期待します。
( 筆者も期待しました )
そして寸劇の記録映像は、フィルムを犯人に破壊されることもなくフェル博士や警察がしっかり見ることができました。

ですが、記録映像を見ることができたことによって余計に捜査が混乱することになるのです!
読者を引き込むのが、本当にうまいですよね。
フェル博士の毒殺講義
フェル博士の登場は、事件もページも半分以上進んだ頃になります。
ソドベリー・クロスの村で起きた毒入りチョコレート・ボンボン事件と、チェズニーの屋敷であるベルガード館で起きた殺人事件。
このふたつは関係があるのか?
それとも、毒入りチョコレート・ボンボン事件はチェズニーの一族とはまったく関係のない、別の毒殺魔の犯行なのか?(そんなにたくさん毒殺魔がいても困るけど)

もうひとつの見どころは、「 フェル博士の毒殺講義 」です。
事件の解決も見えかけた後半で、フェル博士による【 毒殺者とは? 】の講義がはじまります。

毒殺という手段を使った犯人たちを分析しようという試みです。
具体的な人名や職業が多く出てきまして、どんな性格だったのか?どんな特徴があったのか?など、とても興味深く読みました。
恋愛のかけひき
恋愛の要素がちょっとしたスパイスとして効いていてよかったです。

ロンドン警視庁犯罪捜査部(スコットランド・ヤード)のエリオット警部は悩んでいました。
事件の複雑さもありましたが、エリオット警部の悩みは個人的でもっと深刻でした。

なんと担当している事件の容疑者に、好意をもってしまったのです。
いつも実直で冷静なエリオット警部が、自分がどうしてしまったのか分からないほど「 恋 」という砂地獄に囚われてしまっていました。
自分に向けられた好意に気づく瞬間や、本心とは違う行動をとってしまうところなど。
分かるな〜。
人間て不思議な生き物だなぁ〜と、おもしろかったです。
まとめ
いかがだったでしょうか。
「 言葉 」は生き物というのは本当ですね。
単語の流行り廃りもありますけれど、読んでいる時の文章のリズムやテンポという点でも、とても実感しています。
意味が繋がらない翻訳に出会ってしまい、途中で読むのをやめてしまったり。
海外作品は、翻訳での悲しい出会いも正直言ってあります。
そんな中で各出版社さまが、昔の作品を新訳として今の世代にも読みやすく、新たに文庫本として出してくれるのが本当にありがたいです!
「 緑のカプセルの謎 」がおもしろかったので、ジョン・ディクスン・カーの他の新訳も読んでみています。
もし、昔に読んだけど途中で挫折したなぁ〜という方がいらしたら、新訳版に再挑戦してみてほしいです!
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
まめでした。
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