帰ってきた図書委員シリーズ!米澤穂信・著「 栞と嘘の季節」感想レビュー

「栞と嘘の季節」感想レビューのアイキャッチ ミステリ

今回は、米澤穂信先生・著作「 栞と嘘の季節 」を読了しましたので感想レビューしたいと思います。

前作「 本と鍵の季節 」で、童顔で人の良い堀川くんとイケメンでドライな松倉くんの図書委員コンビにすっかりハマりました!

<図書委員シリーズ>として、2作目の「 栞と嘘の季節 」が刊行されているということで、飛びついた次第です。

図書委員シリーズの2冊の写真

前作「 本と鍵の季節 」は、短編が6編入った作品でしたが、今作の「 栞と嘘の季節 」は長編になっています。

図書委員コンビが、どんな謎に挑むのか?

前作の「本と鍵の季節」で、松倉くんの過去の一部が明らかになりました。

松倉くんの「 宝探し 」の後追いはしないと決めた堀川くんはその後どうしたのか?

松倉くんはどういう判断をしたのか。

気になるその後のことも、今作で書いてくれてあります。

<図書委員シリーズ>は青春ミステリですので、残忍な表現は出てきません。

ですが、図書委員たちの青春は「 ほんのりビター 」ということを覚えておいてください。

文庫版も出たところ(2025年6月20日発行)なので、ぜひ読んでもらいたい作品です。

よかったら、読書選びの参考にしてくださいね。

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「 栞と嘘の季節 」

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(あらすじ)

高校で図書委員を務める堀川次郎(ほりかわじろう)と松倉詩門(まつくらしもん)。
ある放課後、図書室の返却本の中に押し花の栞が挟まっているのに気づく。
小さくかわいらしいその花はーー猛毒のトリカブトだった。
持ち主を捜す中で、ふたりは校舎裏でトリカブトが栽培されているのを発見する。
そして、ついに男性教師が中毒で救急搬送されてしまった。
誰が教師を殺そうとしたのか。次は誰が狙われるのか……。
「 その栞は自分のものだ 」と嘘をついて近づいてきた同学年の女子・瀬野(せの)とともに、ふたりは真相を追う。

(内容紹介より)

  • 著者:米澤穂信(よねざわ ほのぶ)
  • 発行:集英社
  • シリーズ名:<図書委員シリーズ>
  • 発行日:2022年11月10日
  • 紙書籍(単行本):1,815
    • (文庫)990円(2025年6月20日発売)
  • 電子書籍(楽天Kobo・Amazon Kindle):(単行本)1,815円

登場人物

  • 堀川次郎(ほりかわ じろう)
    • 童顔の高校2年生
    • 図書委員で手先が不器用な松倉詩門に代り、本の補修や新刊に押す蔵書印などデリケートな作業を担っている
    • よく人に頼まれごとをされる、言わなくてもいいことを言ってしまうのが玉に瑕。
  • 松倉詩門(まつくら しもん)
    • 背が高く彫りの深い顔をしている高校2年生
    • 同じく図書委員
    • 過去の出来事から、人をまるごと信用することはしない

同じクラスには一度もなったことがなく、図書委員として知り合いになり、よくしゃべるようになったふたり。

堀川くんと松倉くんは「 お前のことならなんでも知ってるぜ! 」という親友関係ではありません。

お互いにあえて踏み越えない線どころか、ちょっと壁を作っている不思議な友人関係です。

キャラクターのイメージイラスト

(※筆者の勝手なイメージです)

結論として、堀川くんは松倉くんの「 宝探し 」の結果については何も聞きません。

松倉くんも「 こうすることにした 」とは報告しません。

たぶん「 こういう事になったんだろうな 」という表現が、されています。

ですが筆者としては、じつはあまり信じていません(笑)

それぐらい、「 嘘 」が満載なんですこの作品は!(褒めています)


第一章「 栞と花 」

堀川は図書委員当番の相方が来るのを待っていた。

返却本を調べていると、かわいい小さな紫の花を押し花にした栞が残されているのに気づく。

しかし松倉はその小さな花の栞を見ると、書架の一隅に向かって「天然色日本植物図鑑」を引き出しある名前を堀川に指した。

その紫色の花の名前は「トリカブト」

栞を挟んだまま本を返した生徒は、栞の花の毒性を知っていたのか?

すると「 栞はわたしのもの 」と、同じく2年の瀬野が近づいてくる。

前作「 本と鍵の季節 」から年を越した2月。

ある事情から、図書室に来なくなっていた松倉くんですが還ってきます!

そしてやっと図書委員の仕事をし始めたと思ったら、本に挟まれていた栞がなんと猛毒のトリカブト!

トリカブトの花のイメージ

(画像はイメージです)

しかも、学校の裏庭でトリカブトが栽培されていたことが発覚します。

第一章は、なんだかみんなが隠し事をしている様子。

そのため、すこし展開の進みが遅いように感じてしまいます。

ですが、強烈な印象を残すキャラクター・瀬野さんが登場します。

堀川くんと松倉くんはあんまり突拍子もないことをするタイプではなかったため、まったく心を開かないし嘘を吐きまくる瀬野さんにはびっくりしました。

しかも、芸能人に間違えられるほどのオーラと、めちゃくちゃ綺麗というヴィジュアルなのです。


第二章「 栞と毒 」

生活指導で生徒たちに厳しい教師・横瀬が救急車で運ばれた。

はじめは弁当に当たった食中毒だと思われていたが、ある噂が広まり始める。

「 毒を盛られた 」

事実、その教師の症状はトリカブトの中毒症状そのものだった。

堀川と松倉は、「 栞の持ち主 」を教えて欲しいと瀬野に頼み込まれていた。

なぜ瀬野はそんなに「 猛毒の栞 」に固執するのか?

堀川と松倉は、瀬野を信用しきれないまま「 栞の持ち主 」探しに協力することになる。

ただの食中毒だと思っていた教師が、まさかのトリカブトの毒を盛られた可能性が出てきました。

ドラマや小説でもない限り、普通はそんなことは起こらないだろうと思って生活しています。

そんな「 普通の高校生 」が、本当に教師が毒を盛られたかどうかを現場検証する方法。

現場の生活指導室の「 掃除当番を交代してもらう 」というのが、なんとも現実的でがんばっています。

掃除当場のイメージ

本当に横瀬がトリカブトの毒を盛られたのなら、それはあの「 栞 」のトリカブトなのか?

みんなが自分の弱み・あるいは大事なことを守ろうとして隠しているのが、じれったいです。

高校の図書室という平凡で平和なはずの場所は、「 猛毒の栞 」という武器の出現で、危険な場所へと変わりつつありました。


第三章「 栞と噂 」

「 教師に毒が盛られた 」

その見えない不安は、きれいな水に落とされた墨汁のように静かに、けれども確かに学校中に広がっていき。

保健室に入り切らないくらいの生徒が、体調不良を訴えるようになっていた。

「 栞の持ち主 」はみつかったが、頑なに栞を誰にもらったのかを明かそうとしない。

他にもたくさんの栞が、配られてしまっているのか?

「 猛毒の栞 」を作成し配っている人物を探すために、瀬野の話の裏付けをとろうとする堀川と松倉だった。

松倉くんの小学校の知り合いが出てきます。

ですが、松倉くんという人物を知ろうとすると、するりとかわされてしまうのが悔しいです。

筆者は余計に妄想がふくらんでしまいました。

そして学校の図書室で見つかった栞以外にも、「 猛毒の栞 」を持っていた人物がいたことが判明します。

人を殺せる栞を配っている人物がいる。

誰が何のために?

八王子の繁華街のイメージ

堀川くんたちは、夜の繁華街に重要な証人とも言える人に会いに行きます。

童顔の堀川くんは、補導されずに無事に帰ってこられるのか?が、いちばん心配でした。


第四章「 栞と嘘 」

堀川たちが繁華街に調査に向かい日付が変わったころ、栞の配り手の正体が分かった。

しかし、その配り手はいきなり家を出ていってしまい、まだ戻って来ないらしい。

どこかに逃げたのか?

堀川と松倉は、瀬野の話から「 栞の制作者 」を突き止める。

瀬野さんのイメージイラスト

(筆者の勝手イメージです)

だいたい、ミステリ小説の最後は「 犯人 」の嘘を暴くのが醍醐味だと思います。

「 嘘をついてない 」と言いながら、本当のことではないことを言っている。

タイトルに偽りなしで、犯人だけではなく、みんなが嘘をつきまくってくれます。

騙し合いや、駆け引きが好きな方にはピッタリです。

「 嘘 」のプールでぷかぷか泳いでいる、ならいいのですが。

筆者は読みながら、口元まで水が入ってきて溺れそうになってたように思います。


まとめ

いかがだったでしょうか。

今作の「 栞と嘘の季節 」は長編ということで、アガサ・クリスティー的な「 さらっと大事なことを書いていた 」という箇所に、後から気付かされるので騙されること請け合いです。

そして最後のほうで気づきましたが、この作品には「 大人 」がほぼ出てきません。

「 大人 」に頼ろうという、気持ちが見えない。

登場人物たちの家庭の事情もありますが「 大人 」に頼りたくない、弱みを見せたくないというプライドをすごく感じました。

筆者も高校生の時は、なぜか根拠のない自信にあふれていました。

「 自分には未来がある。なんでもできる 」という、希望。

でも、自分ではどうしようもできない「 金銭的 」な事情だったり「 年齢の壁 」は存在します。

そんな制限のある中で自分たちのできることを最大限に活かして、窮地を脱していくところが「青春ミステリ」の魅力なんだなと、あらためて感じました。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

まめでした。

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