今回は、すごいすごいと噂には聞いていたジョン・ディクスン・カーのミステリ小説「 テニスコートの殺人( 原題:The Problem of the Wire Cage ) 」を新訳版で読んでみました。
これがとんでもなく面白かったので、感想レビューしていきます。
「 足跡のトリック 」で必ずと言ってもいいほど名前が挙がる作品の「 テニスコートの殺人 」または「 テニスコートの謎 」です。

発表年は1939年で、ギディオン・フェル博士シリーズの第11作目。
雨上がりのテニスコートで足跡が被害者と第三者の往復分だけという状況のなか、その第三者は犯行を否定している。
屋外の密室殺人。
この不可能犯罪にフェル博士が挑みます。
古典ミステリって読みにくくない?と思っている方に
みどころを、犯人など重要なネタバレなどはナシで紹介していきます。
読書選びの参考にしてみてください。
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「 テニスコートの殺人 」

(楽天ブックス商品画像の引用)
- 初版日: 2014年07月2日
- 著者/訳者: ジョン・ディクスン・カー/ 三角和代
- レーベル: 創元推理文庫
- 出版社: 東京創元社
- 発行形態: 文庫
- ページ数: 343p
あらすじ
雨上がりのテニスコート、中央付近で仰向けに倒れた絞殺死体。
足跡は被害者のものと、殺された男の婚約者ブレンダが死体まで往復したものだけ。
だが彼女は断じて殺していないという。
では殺人者は、走り幅跳びの世界記録並みに跳躍したのだろうか?
とっさの行動で窮地に追い込まれてしまったブレンダと、彼女を救おうと悪戦苦闘する事務弁護士ヒュー。
“奇跡の”殺人に挑むのは、名探偵フェル博士。
驚天動地のトリックが炸裂する巨匠の逸品!
『 テニスコートの謎 』改題・新訳版
(内容紹介より引用)

登場人物たち
- ヒュー・ローランド
- 事務弁護士。ブレンダに思いを寄せている
- ブレンダ・ホワイト
- 莫大な遺産のためと周囲の為にフランクと結婚しようとしている
- フランク・ドランス
- ブレンダの婚約者。謎の魅力をもつクズな男
- ニコラス( ニック )・ヤング
- ブレンダの後見人。骨折をしていて車椅子の生活
- キティ・バンクロフト
- ヤング邸の近所に住む寡婦

スコットランドヤードのハドリー警視と
ギディオン・フェル博士が事件の謎に挑みます!
みどころ
富豪のジェリーがフランクとブレンダが結婚するという条件で、全財産をふたりに譲るという遺言を残しました。
結婚しないと莫大な遺産は慈善財団に寄付されてしまいます。

莫大な遺産のため
フランクの性格は尊大で自己チューそのものです。しかしなぜか不思議な魅力で女性たちを虜にしています。
そんなフランクに気圧され負け続けている事務弁護士のヒューですが、フランクの婚約者であるブレンダに思いを寄せていました。
これからテニスを始めようというとき、ブレンダとふたりきりになれたことに意を決して気持ちを伝えるヒュー。
ですがブレンダは「 結婚をやめることはできない 」と、ヒューの求婚を拒むのです。


プロローグでのヒューとブレンダの昼ドラのような「いいだろ」「ダメよ」のくだりがちょっと長いなと感じました。
ですがその分、フランクのいけすかなさが際立つので結果オーライです!
ブレンダの本当に気持ちは?なかなか明かされません。
完全犯罪の方法
テニスに興じていたヒュー、ブレンダ、フランク、キティ。
4人は、雷雨が激しくなってきたためテニスコートの脇ある小さな四阿(あずまや)に避難する。
そこに置いてあった新聞記事を見た会話の流れから「 実際に人を殺すとしたらどうやる? 」と言い出すフランク。
するとブレンダは「 人を殺す完璧な方法 」を知っていると言う。


フランクに弄ばれたマッジという女性と、その恋人でチャンドラーという男性の話が出てきます。
このチャンドラーが曲芸師だというのです!
来ましたよ、トリックに関係するのでしょうか?!
無実を証明しようとしてドロ沼になる
帰る途中で車がパンクしていたことに気づいたヒュー。
空気入れを借りようと屋敷に戻ったヒューは、テニスコートの中央付近で仰向けに倒れたフランクの姿をみつける。
コートの脇の四阿(あずまや)にはブレンダがいる。
雨上がりのコートの地面にはフランクの行きの足跡と、往復したブレンダの足跡だけがあった。
「 わたしはやってない! 」
しかしフランクは、四阿(あずまや)でブレンダが話した「人を殺す完璧な方法」で殺されていたのだった。


ヒューは事務弁護士なのにブレンダを守ろうとして
証拠の捏造をしようとしたり、ふたりで口裏合わせをしてなんとか窮地を脱しようとします。
ですが、その度にまた新たな落とし穴が開いてしまうのが面白いです!
驚天動地なトリック!
こんなに関係者一同が、隠し事をしたり証拠を隠そうとしたりしているのでハドリー警視たちの行動は後手後手に回ります。
重要な証人をみつけて、真相に近づこうとするのはヒューとブレンダだったりします。
周りをフェンスに囲まれたテニスコートの真ん中での犯行。
走り幅跳びの選手でも届かないコートの中央。
足跡のない屋外の密室。
フェル博士は想像の翼を広げ、事件のトリックを見破るのです。


マジすごいです!そっちかー!!って感じです。(語彙)
そのトリック実現不可能じゃないの?
たしかに、フェル博士の解説を聞いていると犯人の行ったトリックに驚きと興奮で納得しかけるのですが。
筆者も現実にはちょっと難しいとは思いました。

えー!そんなんじゃ、納得できないし興ざめだ、
と思われるかもしれません。
けれども読み進めていくうちに、事件の関係者たちの性格や行動パターン。
隠していた関係者たちの心理的な要素がどんどん加味されていき。
「 もしかしたら、そんなことがあったのかもしれない! 」と思わせるのです。
うまいですよねぇ。

まとめ
いかがだったでしょうか。
古典ミステリは、読みたいと思っても翻訳が合わなかった場合には本当に意味が繋がらない物語になってしまうのが悲しくてなかなか手が出ませんでした。
せっかくの素晴らしいファーストコンタクトが、トリックと犯人を知っただけになるなんてもったいなさすぎます!
今回はジョン・ディクスン・カー(著)/三角和代(訳)の「テニスコートの殺人」新訳版を読んでみて、物語の世界観に没頭できましたし。
さくさく読んでいけました。
ずっと気になっていた、名作と言われる古典ミステリを読めてよかったです!
これからどんどん古典ミステリの新訳版に挑戦していきたいと思っています。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
まめでした。
・ジョン・ディクスン・カー著作。フェル博士シリーズ10作目「 緑のカプセルの謎 」の感想レビューはコチラからどうぞ!
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