今回は、ユッシ・エーズラ・オールスン著作の「 特捜部Qー檻の中の女ー 」がやっぱり面白かったので、感想レビューしていきます。
筆者がこれまで北欧ミステリで推してきた小説家の「 アーナルデュル・インドリダソン 」は、関係者の内面を深く探っていく捜査タイプでした。
そのため、犯人からの残虐な仕打ちや、被害者が命からがら犯人から逃げる逃走劇といった表現はありませんでした。
ですが、この「 特捜部Q 」シリーズは、被害者が肉体的にモロに受ける痛い表現がたくさん出てきます!
( 続く第2作の「 特捜部Qーキジ殺しー 」に至っては、もはやホラーと言ってもいいくらいです! )
ホラーが苦手な筆者は、おもしろいのは間違いないだろうけど…と敬遠していました。
ですが、「 Kindle Unlimited 」で読み放題になっていたのを期に読んでみたところ。
そのおもしろさにドハマリしてしまったというわけです!
確かに痛い表現が出てきますので、そこには注意が必要なのですが。
「 北欧ミステリ 」に興味がある方に、ぜひ読んでみてもらいたい作品です。
犯人や重要なネタバレなどはナシで、感想レビューしていきます。
読書選びの参考にしてみてください。
北欧ミステリおすすめ作品記事
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「 特捜部Qー檻の中の女ー 」

(楽天ブックス商品ページより引用)
- 著者:ユッシ・エーズラ・オールスン
- 訳者:吉田 奈保子
- 出版社:早川書房
- 発売日:2012年10月5日
- 本文:524ページ
- 紙書籍(文庫)1,760円 / 電子書籍(楽天Kobo)1,100円
登場人物
- カール・マーク
- 警部補。ある事件から警察署内で腫れ物扱いをされている。特捜部Qの主任
- ハーフェズ・エル・アサド
- カールのアシスタント。出自が謎に包まれている
- ミレーデ・ルンゴ
- 民主党副党首。才女で美人だが周りとの関係に距離を置いている
- ウフェ
- ミレーデの弟。

ほかにも北欧ミステリならではの、なかなか覚えづらい名前の警察関係者もたくさん出てきます。
とりあえず、この四人を覚えておけばオッケーです。
あらすじ
捜査への情熱をすっかり失っていたコペンハーゲン警察のはみ出し刑事カール・マーク。
殺人捜査課からの厄介払いのために、新設された部署、未解決の重大事件を専門に扱う「特捜部Q」の統率を命じられる。
しかしオフィスは窓もない地下室、部下はシリア系の変わった男アサドの一人だけだった。
まずはフェリーから海に落ちて自殺したと片付けられていた女性議員失踪事件の再調査に着手したが、次々と驚きの新事実が明らかに!

みどころ

みどころはズバリ。
「 探す捜査官と監禁されている被害者、ふたつの視点」です。
捜査官カールの視点で進行する現在の「2007年」の出来事と。
被害者であるミレーデの視点で起きる過去の「2002年」。
ミレーデが誘拐されて、監禁されたことが明確に読者に分かった時点ですでに5年もの時間が経過していることになります。

ミレーデの置かれている環境は、劣悪なものでした。
「 これでは、ミレーデは生きていないのかもしれない… 」
読んでるコチラも絶望の気持ちになります。
カールの捜査が進展して、ミレーデが発見されるかもしれない!と、希望が出てきても。
過去のミレーデの状況は、犯人の苛烈な憎しみによる虐待によって発狂してもおかしくないほどに追い詰められていきます。
カール捜査官はミレーデ救出に間に合うのか?ハラハラドキドキなのです。
表現が痛いので注意です
逃げようとして爪がはがれ血だらけになったり。
ハッピーバースディのたびに、監禁されている部屋の気圧が変えられたり。(嫌すぎる)
長い間監禁されて、精神が崩壊してもおかしくないような拷問のシーンが出てきます。
「 これが現実ではありませんように 」と願うミレーデに、共感しかなかったです。

なぜ犯人はこんなにもミレーデを憎むのか?
デンマーク社会の闇も関係しているのが、なんともやるせないです
捜査官カールと助手アサドのコンビがおもしろい
はみだしもので、煙たがれているカールに優秀なアシスタントをつけてもらえるはずもなく。
やってきた助手は、シリア出身の変わった男アサドでした。
狭い部屋に敷物を敷いてお祈りをし。
署内でエキゾチックなスパイスたっぷりのパイを振る舞い、カールの昇進を祝おうとしたり。
砂糖てんこ盛りの紅茶を出す。

文化の違いもあるとは思いますが、アサドの行動と考え方は優秀な捜査官であるカールの常識を超えたものが多いです。
となると、アサドは捜査に邪魔で迷惑な存在にみえてしまいます。
ですがこれはすべて、アサドが相手にとってよかれと思ってしていることだったりするのです。
なによりアサドは、カールと同じで被害者を探そうと懸命に捜査のアシスタントをしています。

そのため、アサドのやることに振り回されるカールを見るのもおもしろいですし。
一生懸命なアサドは、魅力的に感じるのです。
カールの過去と謎
ミレーデの失踪事件とは別に、殺人課の追っている「 ヴァルビュー公園の自転車殺人事件 」。
それにカールの人生が一変した「 アマー島での銃撃事件 」と、話が進行していく中でミレーデの失踪事件を軸に違う事件が関係してきます。
なかでも、カールが捜査に情熱を持てなくなった原因の「 アマー島での銃撃事件 」は、謎が多く残されています。
アマー島の事件で同僚を失ったカールの、どうにもできない残酷な現実。
どうしても一人だけ助かってしまったという、負い目を引きずりながら、違う事件の被害者を助けようと懸命になっていくカール。

では変人アサドと対象的に、カールは優秀で真面目なのか?というと、まったく違います!
どうしようもできなかったという後悔の深い葛藤と反して、魅力的な女性をみるともう頭がいっぱいになり果敢にアタック(古)していく男性の悲しい性も見せてくれます。

アホだなぁ〜と思いながらも、この感情の落差も人間味あふれるカールの魅力だと感じました。
「 特捜部Qシリーズ 」
「 特捜部Qシリーズ 」は、9巻まで日本語訳で刊行されています。(2025年08月現在)
1. 特捜部Q -檻の中の女-
2. 特捜部Q -キジ殺し-
3. 特捜部Q -Pからのメッセージ-
4. 特捜部Q -カルテ番号64-
5. 特捜部Q -知りすぎたマルコ-
6. 特捜部Q -吊された少女-
7. 特捜部Q -自撮りする女たち-
8. 特捜部Q -アサドの祈り-
9. 特捜部Q -カールの罪状-

特捜部Q―檻の中の女― (ハヤカワ・ミステリ文庫)
まとめ
いかがだったでしょうか。
陰鬱としたイメージの北欧ミステリの中で、凄惨な事件でありながら。
優秀なのに情熱を失った捜査官のカールと、シリア系の変人アサドの異色のバディがコミカルさを加えていて、読みやすかったです。
そして相変わらす、捜査に協力しようとしない関係者ばかりで「 あぁ、北欧ミステリだなぁ 」とほっこりしました。
不思議なことに、この殺伐した人間関係がクセになるんです。
愛する人や、自分の世界を守ることにすごく情熱的になったかと思えば。
他人には無関心。
そして、弱者は守られない悲しい社会の構図。
事件が解決しても、どこかやるせなさや虚しさが残る読後。
それも、「 北欧ミステリ 」の魅力のひとつだと感じています。
「 特捜部Qー檻の中の女ー 」は、人気の北欧ミステリで映画化もされています。
こちらも興味が出たら、見てみてください。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
まめでした。

特捜部Q 檻の中の女(字幕版)
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