英国ミステリ小説
こんにちは、まめです。
来てくださって、ありがとうございます。
今回は、M・W・クレイヴン著作の「 ストーンサークルの殺人 」(原題:The Puppet Show )が、とっっても面白かったので感想レビューしたいと思います。
読みたいと思ったきっかけは、『 このミステリーがすごい!2025年版 』(宝島社)の海外編に、M・W・クレイヴン著作の「 ボタニストの殺人 」が入っていたことです。
表紙も美しく、あらすじを読んでみたら、あら面白そう!と、さっそく飛びつこうとしたのですが。
「 ボタニストの殺人 」は、ワシントン・ポー部長刑事のシリーズ物で。しかもその、最新作品とのこと。
( アーナルデュル・インドリダソン著作の「 緑衣の女 」と、同じ轍を踏むところでした )
せっかくなので、主人公の人となりを最初から知りたいと思い。シリーズ1作目の「 ストーンサークルの殺人 」を、購入してみました。
ストーリーとキャラが良かったのもありますが、なによりも文章が読みやすく没入できました。
情景を想像しながら進めていけたので、映画をみてるようでしたね。久しぶりに午前1時まで夜ふかしして、読み続けましたよ!
「 ストーンサークルの殺人 」を読もうか迷っている方や、ページをめくる手が止まらないミステリ、犯罪小説が読みたい!と探している方。
よかったら、感想レビューをみていってください。
「 ストーンサークルの殺人 」のみどころ
「 ストーンサークルの殺人 」M・W・クレイヴン著 / 東野さやか訳
出版社は早川書房からで、発売は2020年09月03日です。
ページ数は472ページ。
あらすじ
イギリスのカンブリア州のストーンサークルで、年配の男性が焼死体で発見される。杭にくくりつけられ、拷問をされた猟奇的な殺人の犠牲者はすでに3人。
その3人目の遺体に、ある不祥事を起こして停職中の「 ワシントン・ポー 」の名前と「 5 」のメッセージが刻みつけられていた。
マスコミに「 イモレーション( 神への供物として殺す )・マン 」と名付けられた連続殺人鬼の目的はただの快楽殺人なのか?それとも目的があるのか?
ポーは休職を解かれ、捜査に合流することになる。
事件はすでに起こった状態からはじまるストーリーは、話に入りやすくて良かったです。
とはいえ、凄惨な事件なので。
捜査の資料というフィルターがかかった状態で、遺体の状態を読むのですが。そりゃもう、詳しく解説してくれますから、かえって異常性が際立って感じられました。
遺体を燃やす燃料促進剤については、この知識が役に立つときは来ないだろうけど。覚えておいたらカッコいいなと、厨二病っぽいことを考えてしまいました。
登場人物たち
- ワシントン・ポー:国家犯罪対策庁( NCA )の重大犯罪分析課( SCAS )に所属する部長刑事。証拠をなによりも求めるため、時には組織の手順を蔑ろにしてしまう。38歳。
- ティリー・ブラッドショー:同課の分析官。IQ200の天才。
- ステファニー・フリン:同課の警部。元はポーの部下だったが、ある事件でポーが休職することになり、その後釜に座ることになる。整理整頓や手順を重んじる。
- キリアン・リード:カンブリア州警察犯罪捜査課の部長刑事。ポーとは昔からの友達で、オシャレさん。
- イアン・ギャンブル:同課の警視。ポーのやり方が気に入らない。だいたい怒ってる。
自分のためにも、メモっておきます。
【 階級の偉い順に 】
警視( Superintendent )→主任警部( Chief Inspector )→警部( Inspector )→巡査部長( Sergeant )→巡査( Constable )
※「 部長刑事 」は「巡査部長」の階級で( Detective )の敬称がつく。
刑事チーム内をまとめる中間管理職らしいです。
( perplexity参照 )
人間臭い愛すべきキャラクターたち
警察組織って、本当に縦割り社会よねぇ〜。と、ある意味感心してしまうくらい、階級や役職に関するいざこざが起こります。仕事はできないのにプライドの高い上司って…どこにでもいますよね。
なにより、証拠を重視して追い求めるポーにとっては。情報を分析した結果、自分に降りてきた「 ひらめき 」を立証しようとするのですが「 勘 」と一笑に付され分かってもらえない状況が多いです。
と、いうのも、ポーは上司に「 お伺いを立てて 」や「 根回ししてから 」ということをやろうとしないからです。
ポーがよく人を怒らせるのも、人が世間で生きていく上で顔色を伺ってうまく取り繕うような「 空気をよむ 」ことをまったくしないからだったりします。立場より、証拠が第一!です。
孤独を愛するといえばカッコいいですが、ポーは自分の生い立ちにトゲを感じています。
誰にも向けることのできない「 怒り 」が、ポーの根底にはあります。
それが、多角的な視点によるひらめきと、積み重ねた証拠を重視するポーの捜査への原動力になっているのですが。
事件の真相が明らかになっていくにつれ、ポーはその「 怒り 」の本質と向き合わなければいけなくなるのです…。
このキャラが愛しい
「 社会 」を知っていて迎合しないワシントン・ポーとは対照的に、「 社会も世間 」も知らない温室育ちの分析官ティリーがすごくいいキャラしています。
社会常識を知らないティリーは、しばしば( いつも? )疑問に思っても普通は聞かないこと、言わないほうがみんなのためなのに…ということを、スパッと言ってしまいます。
( どこかの北欧ミステリードラマの主人公のようです )
そのため、人に距離を置かれたりイジメられたりしますが、能力はダントツ優秀です。
まめも5分でプログラムを書いてみたいです。
はじめはティリーの優秀な能力だけを期待して、事件の捜査に帯同させていたポーですが。
予測のつかない発想と知識で、停滞する状況に風穴を開けたり。特殊なコミュニケーション方法で重要人物と関係を築くティリーに感心し、ポーは認めるようになっていきます。
ポーとティリーが、だんだんと良いコンビネーションを発揮して、バディとなっていくのは読んでいて微笑ましい気持ちになりました。
作者のM・W・クレイヴン
M・W・クレイヴン( Mike W.Craiven )は、イギリスの北西部に位置するカンブリア州出身の犯罪作家です。
2018年に発表された今作「 ストーンサークルの殺人 」で、英国推理作家協会賞最優秀長編賞( ゴール・ドダガー )を受賞しました。元軍人で、保護観察官という経歴の持ち主。
今作は、その職業の経験と知識がぎっちりと詰め込まれた作品でした。あまりに詳しく説得力のある描写に、こんなに捜査のやり方を外部に( 世間 )バラしてしまって大丈夫?ってちょっと心配してました。( 信じすぎ。笑 )
ジャンル的には、ミステリ小説よりは警察小説になるのだと思います。
( 調べてみたら、国家犯罪対策庁( NCA )の重大犯罪分析課( SCAS )はイギリスに本当にある組織なのですね )
ピースの欠片から手がかりをみつけ、情報を分析しながら、犯人の「 イモレーション・マン 」を一緒に捜査して追いかけていく感覚になれます。
まとめと続編
いかがだったでしょうか。
「 ストーンサークルの殺人 」は、さすがに賞をとっている作品なので面白さは折り紙付きなのですが。東野さやか氏の訳が素晴らしいと思いました。。
専門用語が満載なのに、とても分かりやすかったし読みやすかったです。
( アンソニー・ホロヴィッツ作品の山田蘭さんの訳も素敵ですよね )
湖水地方の前がみえないほどの霧の様子や、苦悩するポーの思考の流れなど。
情景がみえてくるような、空気と雰囲気をも訳して見せてくれる文章が、今作の「 ストーンサークルの殺人 」にもありました。
ただひたすらに、問題と情報を整理して犯人にたどりつくクイズとは違い。
苦悩して失敗して怒って泣いて、あがく人間を描いているからこそ、読んでいて感情をゆさぶられるんだろうなとあらためて思いました。
次回作の「 ブラックサマーの殺人 」も購入してあるので、読むのが楽しみです!
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
まめでした。
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