今回は、アガサ・クリスティ著作の「 チムニーズ館(やかた)の秘密 」( 原題:THE SECRET OF CHIMNEYS )の感想レビューです。
今作の「チムニーズ館の秘密」は、いわずと知れたミステリの女王「 アガサ・クリスティ 」の5作目の長編小説です。
「 『ミス・マープル』のドラマで同じタイトルを見たけど、原作は読んでないなー 」とふと思って、読んでみたところ。
これが、まったく別物でして。
やはり原作は読んでおかないといけないな、と反省したものです。
有名な探偵である「エルキュール・ポアロ」や、安楽椅子探偵の「ミス・マープル」は出てきません。(そうなんです。出てこないんです)
夫婦探偵のトミーとタペンスのシリーズでもありません。
日に焼けた背の高いイケメン、「 アントニー・ケイド 」のロマンスと冒険活劇の作品です!
推理小説やミステリ小説ってむずかしそうと、思っているかたに読んでみていただきたい。
ミステリ作家として知られているアガサ・クリスティの「冒険スリラー」という、スリルとアクションが強調されたジャンルの作品はいかがでしょうか。
みどころや注意点などを、犯人など重要なのネタバレはナシで紹介していきます。
よかったら、みていってください。
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新訳「 チムニーズ館(やかた)の秘密 」

(引用:Amazon)
- アガサ・クリスティ (著)
- 山田 順子 (翻訳)
- 出版社 : 東京創元社 ( 2024年 8月16日 )
- 発売日 : 2024年 8月16日
- 文庫 : 416ページ
シリーズものではありませんので、この作品のみで楽しむことができます。
あらすじ
南アフリカで観光ガイドをしていたアントニー・ケイドは、
旧友のジミー・マグラスと再会し仕事を頼まれる。
その仕事とは、「 ヘルツォスロバキアの元首相の手記 」をここ南アフリカから
ロンドンの出版社へと届けること。なんと謝礼は千ポンド。
(1925年当時の1ポンドは=4万円ほど。ざっと4千万円)
しかしもうひとつ頼まれたのは、恐喝者におびえる婦人「ヴァージニア・レヴェル」の
ラブレターを本人に返すこと。
ラブレターの中に「 チムニーズ 」の文字があることから、
イギリスでも有数の邸宅「 チムニーズ館 」が関係しているらしい。
折しも、チムニーズ館では政府の高官や経済界の大物が集まり、
秘密裏に「 国家の危機的状況 」を打開しようとしていた。
そんな時に思いがけないところで殺人事件が発生し、ケイドも巻き込まれることになる。
登場人物たち
- アントニー・ケイド
- 南アフリカで観光ガイドをしている青年。定職を嫌い、いつも革命を求めている
- ジェームズ(ジミー)・マグラス
- ケイドの旧友。よく人を助ける。金鉱探しに夢中
- クレメント・エドワード・アリステア・ブレント
- 9代目ケイタラム侯爵。チムニーズ館の主。できれば政治的なことに関わりたくないと思っている貴族
- レディ・アイリーン(バンドル)
- ケイタラム侯爵の娘。一度乗ったら忘れられない運転をする令嬢
- ヴァージニア・レヴェル
- 元外交官夫人。詩にできるほどの美しさと知性の魅力で、モテモテの未亡人
- バトル警視
- スコットランドヤードの警視。寡黙でめったに感情が面にでない。とても有能
他にもわんさか登場人物が出てきますが、この6人がとても魅力的なキャラクターになっていました。
ここに注意

ミスリードとして、多くの人物に注意を向けようとしているので、「 あれ?この人誰だっけ 」はよくあります。
注意点として貴族の方が多いので、普段名乗っている名前と「 爵位 」の名前のふたつがあったりして、結構こんがらがります。
ケイドも、外国の紳士の名前の発音がむずかしすぎて「 ロリポップ男爵 」というあだ名をつけているくらいですから。
絡み合う謎
主にこの4つの謎を解明していくのですが、まーあ、入り乱れてやってきます。
伏線に次ぐ伏線で、忙しいですが。
これが、あれなのね!と繋がったときに納得できて、とてもスッキリしますよ。
ヘルツォスロバキア
物語の中心にはいつもこの「 ヘルツォスロバキア 」という国が、どんと構えています。
バルカン諸国のひとつとされ。
最期の国王はニコライ四世で、7年前に王妃とともに暗殺されている。
それ以来、国家元首を君主としない共和制をとっています。
その「 ヘルツォスロバキア 」の王政復古を願い、国王だったニコライ四世の後継者に「 ミハイル大公 」を擁立しようとする王政派の勢力と、革命派である「 赤い手の同士 」の対立。

「 ヘルツォスロバキアの元首相の手記 」を持ったケイドを狙って、さまざまな組織が接触してきます。
( なかには、暴力に訴える勢力も )
「 ヘルツォスロバキアの元首相の手記 」をめぐる駆け引きや、取った盗られたの攻防がおもしろかったです。
気になった登場人物
今回の気になった登場人物は、「ヴァージニア・レヴェル」です。
クレオパトラに扮装したポスターが出てきたり。
背が高く、すらりとして、その優美な容姿については詩が書かれてもいいほど、と評されています。
見る人を惹きつけてやまないヴァージニア・レヴェルですが。
筆者が魅力的に感じたのは、なんと言っても会話の返しのうまさです。
「 ウィット( wit )に富んだ会話 」とは、こういうことなのか、と思わせられる。
ずっと話を聞いていたい魅力ある女性です。
特にいいなと思ったのが。
「 朝になったら、そうね朝の10時頃なら必要以上に感情が高ぶったりしないでしょうから。その時間になったらあなたにキスしてあげるわ 」
「チムニーズ館の秘密」より引用
このセリフを、深夜にあやしい物音を聞いて現場に向かっている状況で言えるのが素敵すぎます。
イケメンで危険をものともしないケイドと、機知に富んだヴァージニアとの会話は楽しいです。

しかし「 みんなに愛されるのが好き 」と公言するヴァージニアですが。
ケイドが返そうとしているラブレターの持ち主は「 脅迫者に怯えるヴァージニア・レヴェル 」です。
ふたりは同じ人物なのか?
本人が気づかないうちに、ヴァージニアは事件における重要な人物になっていきます。
おまけ
本編後の解説に、「 チムニーズ館 」がふたたび登場する「 7つのダイヤル 」という作品のことが紹介されています。
「 チムニーズ館の秘密 」の4年後を舞台にした作品で、
今度はケイタラム侯爵の娘バンドルが主人公の謎解き冒険活劇です。
この作品もかなり昔の出版なので( 1929年出版 )
早川書房の深町眞理子さん翻訳のもの( 2004年2月15日発売 )を電子書籍で購入しました。

(引用:Amazon)
タイトルが「7つのダイヤル」から「 七つの時計 」に変わっていますが、内容はいっしょです。
ロマンチック冒険活劇ミステリーといった感じで、おもしろかったです。
・「 七つの時計 」の感想レビューはコチラからどうぞ!
まとめ
いかがだったでしょうか。
アガサ・クリスティ著作の「 チムニーズ館( やかた )の秘密 」
2024年に新訳で創元推理文庫から復刻されたので、手に取りやすくなっていると思います。
2025年3月下旬現在の1ポンドは193円という、物価の上昇やインフレによる1925年との貨幣の価値の違いにびっくりしつつ。
1925年に出版されとは思えない、魅力ある謎とロマンス。
そして、冒険活劇を読めて楽しかったです。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
まめでした。
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